LoveS2000’s diary

思いつき、方針などを綴ります。万が一、参考になれば幸いです。

私が通った異世界の穴

S.K君へ

 お久しぶりです。お変わりありませんか。

 こちらは緊急事態を越したかと思えば感染者数がまた増えてきており、未だ迂闊に外歩きができない状況にあります。感染者の方々が無事に退院なされることを祈るばかりです。

 さて、君からのお便りには「異世界の穴」について語られていました。君の語る異世界の穴とは、若者にとっての「人生のターニングポイント」と言い換えることもできるのかな。少なくとも私の思い描いた「彼」は巡礼に加わったその日から、彼の人生は変わっています。君の文章は読んでいて、不思議と"He jumped into ..."なんて英文が浮かぶくらいにはリアルでした。私の場合、中学へ入学する際に「穴」はありました。詳しい話は省くとして、ご存知の通り私は公立の小学校から私立の中学校へ入学しました。知らない同年代に囲まれた当時はまさに「井の中の蛙大海を知る」気分でした。その気分に味をしめたのか、不思議と節目ごとにコミュニティーを渡り歩くような生き方をしています。

 書いていて考え直しましたが、上の「節目による転機」は君の言う「穴」とはちょっと違いますね。君の言う「穴」は主体的(なにかに後押しされてと言う場合も含みます)で、上で私が書いた「穴」は受動的ですね。「主体的に飛び込んだ転機」という視点で考えれば、自転車競技を始めた時期が「穴」に当たるかと思います。

 幼少から中学生までは、私は文化系の趣味に没頭していました。主には読書や絵描きです。小学校の頃、図書館にて伝記と出会いそこが所蔵する火の鳥文庫は全て読破しました。中学校では伊坂幸太郎著の「死神の精度」と出会い、それから瀬尾つかさの「約束の方舟」、伊藤計劃の「虐殺器官」、内田幹樹「パイロット・イン・コマンド」など方々の作品をつまみ食いしておりました。エセ文学少年の端くれだった少年はある日突然、体育会系の道にシフトし始めたのです。自転車競技を始めんとするあの頃の勢いは今考えると「異常だった」と思います。始めようとした理由は「先輩がやってたから」。しかもその先輩、よく知らない相手なんですよ。よくわからない動機で始めてしまったスポーツは果たして、初心者の割には入賞回数総計5回と、まぁ悪くはない結果をいただきました。その後は高校で得た結果に満足してしまって、競技には関わっておりません。しかしながら、通学に自転車を積極的に使うようになり、自発的に運動しようと友達とサイクリングを企画するようになり、運動に対しての考えが大きく変わったことは確かです。中学以前の自分なら運動に楽しさなんか見出せませんでした。これが私にとっての「穴」でした。

 君の引用したジョブズのおっしゃった通り、この時期の私は「好奇心という穴に向かっていた」のかも知れません。大学、大学院を経て少し疲れてしまった私は今一度、ここで向き合った好奇心を思い出したいと思う次第です。

 やっぱり私が文章を書く時は自分語りになってしまっていけませんね。S君が良ければ君の通った「穴」についてお便りください。ドブ穴にはまったなんて話はナシですよ。

 それでは君からのお返事を楽しみに待っております。